福地という男~全身全霊がブラインドフットボーラー~

僕は筑波大学を卒業した。
Avanzareつくばには、大学の先輩が数名いる。

その一人、福地 健太郎。

2018年ブラインドサッカー日本選手権。
彼は大きな仕事をした。

福地という男

福地さん。
通称、ふくちゃん。または、オヤジ。

聞くところによれば、物心つく前に失明し、以来ずっと全盲だという。

幼き頃から運動神経ばつぐんで、バク転ができるとかできたとか。
倒立前転は現任したので「できた」という点においては疑うべくもなく。

そんな彼は、文武両道を地で行く男。

話せる言葉の種類は片手で数えられるとか、られないとか。
英語、日本語、スペイン語……

僕は酔っ払った彼にポルトガル語で説教されたことがある。

ブラインドサッカー戦士のパイオニア

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福地さんは、全国でも指折りのブラインドフットボーラーだ。

アスティガーズ→Avanzare→ナマーラ北海道と名門を渡り歩き、今年の春、古巣であるAvanzareつくばに帰ってきた。

福地選手の売りは幾つもある。

バク転が出来たこととか、ノリが良すぎるところとかではなくて。

素早く正確なボールへの反応。
しつこくしぶといディフェンス。
安定したドリブルワーク。
無尽蔵なスタミナ。

10年前までブラインドサッカーのフィールドプレイヤーだった僕も、練習で彼と何度もマッチアップした。
僕は体格が良かった。競り負けることは少なかったと自負している。

そんな僕が、ドリブルをしてくる彼に体を寄せた。
背丈は平均よりだいぶ小さい福地さん。
負けるはずはないと思っていた。

ファールぎりぎり、思いっきり体当たり。

しかし彼は、ボールを失うどころか、よろめきもしない。
しつこく接触しながらプッシュする。
もう多分ファール。

それでも先輩は両足の間にボールをおさめたまま。

あんまり悔しくて両腕で突き飛ばす。

だけれど、福地さんは倒れるでもなく、ボールをキープしたままだった。

「オイ!ファールだろ!!」

陽気で温厚な福地さんがキレた。

でも、ボールは先輩の足下にあるまま。
完敗だった。

Vivanzareと福地さん

Avanzareつくばは、2018年、2年ぶりにブラインドサッカー日本選手権で優勝をした。

予選から数えて5試合。全てを無失点。

日本代表キャップ保有者3名、トレセンメンバー1名、ゴールキーパーは2年前のベストキーパー賞。

候補を含め日本代表だらけのチーム。
代表合宿で、チーム練習は殆どできない。

そんななかでも、福地さんは、毎週練習に来てくれた。
己のために。そして、久しぶりに発足したBチーム、Vivanzareつくばの練習に付き合いながら。

トラップの確率、ルーズボールの奪取率、ドリブルのリズム。

どれをとっても際立っていた。
経験の浅いVivanzareのメンバーは、福地さんのプレーを肌で感じて、全国レベルを理解した。
彼とマッチアップして、何度も抜き去られ、ボールを奪われながら、対人の難しさを学んだ。

小さい体は、日本で一番分厚い教科書だった。

日本選手権決勝戦。

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福地選手は、Avanzareつくばのスターティングラインナップを飾った。

対するは前回王者の、たまハッサーズ。

率いるのは黒田選手。
誰もが畏敬の念を持つブラインドサッカーのヒーローは福地さんの元同僚。
かつての仲間と、福地選手は対峙した。

世界を相手にDF陣を黙らせるストライカーに、何度もしぶとくまとわりつく。
ボールに絡んで離さない。
壁際に押し込まれようとも。

俺は知ってるぜ。
相手が吹かれた笛は、ミスによるものじゃないってこと。
アンタのしつこさが奪い取ったものだって。

良い流れのときに限って、福地さんはそこにいて、
これからってときに限って、地味で派手さもない仕事をしやがる。
敵としてだと腹立たしい限りで、味方としてだと、感嘆させられるばかり。

ブラインドサッカーをご覧の皆様。
福地健太郎の凄さがわからぬ内は、ブラインドサッカーを語らせません。

そして、一目ご覧になった皆様はわかっているばず。

福地選手の、しつこさ、しぶとさ、小さな体から溢れ出る闘志を。

福地さん、つくばにお帰りなさい。
俺はあんたの年期のはいった13番と、今も変わらず相手をイライラさせ続けるプレーを間近で観れて、むっちゃくちゃ上がってるよ!!

PS. 福地さんはイニエスタに似ている。

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